東北大学の福原幹夫リサーチフェロー(未来科学技術共同研究センター)らの研究グループは、セルロースナノファイバー(CNF)※組織を制御したナノサイズのシート材に半導体特性が発現することを見出した。

 半導体にはシリコン(Si)に代表されるものとガリウムヒ素(GaAs)のような化合物に代表されるものの2種類ある。いずれも鉱物から金属精錬した人工化合物で、合成過程で多くのエネルギーを使用し非常に高価だ。もしバイオマス素材を利用した半導体を開発できれば、カーボンニュートラルかつ再生可能で安価な素材であるため、新たな産業創出が期待できる。

 製紙用パルプは、カーボンニュートラル素材の地球再生のエース材料として期待されているが、現時点での応用は機械的・化学的分野に限定されている。研究グループは、CNFのような微細構造体として組織化すれば、電荷分布や電子移動を発現できると予測した。

 研究により、一年草のケナフ(西アフリカ起源の植物で紙の原料に使われる)から作成されたナノ(10億分の1)メートルサイズのアモルファスケナフセロースナノファイバー(AKCF)シートに、n型半導体特性(負電圧領域に電流の電圧依存性が反転する挙動)が発現したことを確認した。また直流通電時の並列回路(低伝導帯)から交流通電時の並列回路(高伝導帯)に変化する特性も示した。

 このような特徴から、高価な高純度シリコン(Si)素材やレアメタルを用いた化合物半導体と異なり、低廉で無害のバイオ素材による半導体作製の可能性も出てきた。また日本に豊富に存在する森林資源を活用することで、植物由来の半導体によるペーパーエレクトロニクスの実用化が期待されるとしている。

※セルロースが主成分の植物繊維をナノメートルサイズまでほぐして微細化した素材。

論文情報:【Scientific Reports】A novel n-type semiconducting biomaterial

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