国際的に大きな問題になっている睡眠薬の適正処方に向け、日本で2012~2018年に計3回の診療報酬改定が行われたが、有意な効果を認められないことが、秋田大学大学院医学系研究科の三島和夫教授、秋田大学医学部付属病院の竹島正浩講師らの研究で明らかになった。

 秋田大学によると、研究グループは日本医療情報センターのレセプトデータを使い、2012年度、2016年度、2018年度に初めて睡眠薬を処方された18万6,535人の患者を対象に睡眠薬の長期処方に対する診療報酬改定と新規睡眠薬の効果を調べた。

 その結果、睡眠薬の適正使用を目的とした診療報酬の改定は長期処方の改善に有意な効果を認められなかった。安全性が高く、依存性がない新規睡眠薬のうち、メラトニン受容体作動薬は短期処方と有意な関連を見い出せなかったが、オレキシン受容体拮抗薬で不眠症治療を始めることが短期処方につながっていることが分かった。

 睡眠薬の多剤併用や依存性を持つベンゾジアゼピン受容体作動薬の長期処方が国際的に問題視されている。政府は睡眠薬の適正処方に向けて診療報酬の改定を行ったが、その効果は検証されていない。この間、依存性のない新薬も市場に登場し、これらが長期使用を是正する可能性が示唆されていたが、この効果の検証も実施されていなかった。研究グループは今回の研究で不眠症状の重症度が考慮されていないことから、引き続き研究が必要としている。

参考:【秋田大学】診療報酬改定と新規睡眠薬の睡眠薬長期処方に対する効果(PDF)

大学ジャーナルオンライン編集部

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