名古屋大学大学院生命農学研究科の藤田祐一教授の研究グループは、光合成生物で窒素固定酵素を働かせることに初めて成功した。
窒素は、肥料の三要素(窒素・リン酸・カリウム)の筆頭にあげられ、作物の栽培で高い収穫量を得るための必須要素である。現在、ほとんどの窒素肥料は、工業的窒素固定によって作られている。窒素固定とは、空気に含まれる窒素分子をアンモニアに変換する過程であり、多くの生物はこれで栄養を得ている。しかしながら、微生物にはニトロゲナーゼと呼ばれる酵素を使って空気中の窒素を肥料成分に変える能力を持つものがいる。もし作物(植物)もニトロゲナーゼを作ることができれば、作物自身が空気から空気肥料を作れるようになるかもしれない。
同研究グループはこれまでの研究で、窒素固定を行うことができるシアノバクテリアで窒素固定に必要とされる遺伝子を見つけ、さらにニトロゲナーゼを作るよう指令を出すたんぱく質を見つけていた。そこで、今回、窒素固定をしないシアノバクテリアに窒素固定酵素とその関連遺伝子26個をシアノバクテリアに導入し、初めて光合成生物で窒素固定酵素を働かせることに成功した。
この成果は、植物への窒素固定酵素の導入に役立つことが期待され、肥料がいらない”空気中の窒素を肥料とする”農業への実現への大きな一歩となることが期待される。