東北大学大学院歯学研究科の相田潤准教授らの研究グループは、日本の高齢者1万人以上を追跡調査した結果、都市部では地域の人々への信頼感が低い人ほど健康でないと感じているが、農村部では地域の人々への信頼感は健康感と関連していないことを明らかにした。

 他人への信頼感は健康に良い影響を与えるとされるが、状況による違いを考慮した研究は多くない。そこで研究グループは、近所付き合いが密接な日本の農村部に注目し、人々のつながりの指標の一つである「地域の人々への信頼感」と主観的健康感の関連が都市部および農村部で変化するのか検討した。

 対象は「日本老年学的評価研究プロジェクト(JAGES)」(注)の調査(2010年度と2013年度)に参加した日本の24市区町村在住の65歳以上の高齢者13,657名(年齢中央値72歳、女性53.4%)。他者一般への信頼感(一般信頼)と地域の人々への信頼感(特定信頼)の2つの信頼感を、アンケート用紙により調査した。健康状態については主観的な健康感を用いた。

 その結果、都市部では地域の人々への信頼感が高い人ほど健康と感じているが、農村部では主観的健康感と関連しないことが判明。また、地域にかかわらず、他者一般への信頼感が高い人ほど健康と感じることが分かった。これまで、他人への信頼感が高いほど健康に良いと考えられていたが、今回、他人への信頼感が健康に与える影響は地域によって変化することが示された。

 すでに密な関係が築かれている農村部では、精神的なつながりとは無関係に健康維持が可能とみられるが、他者一般への信頼感とは関連しているため、外部の様々な人との交友関係は健康に良い影響を与える可能性があるとしている。

注:健康長寿社会をめざした予防政策の科学的な基盤づくりを目的とした研究プロジェクト。文科省・厚労省など多数の助成を受け、全国規模で高齢者の調査を実施。

論文情報:【SocialScience & Medicine】Generalized and particularized trust for health between urban and rural residents in Japan: A cohort study from the JAGES project.

大学ジャーナルオンライン編集部

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