東京工業大学の石谷治教授らの研究グループは、フランスパリ第7大学と共同で、有機半導体材料と鉄錯体から成る光触媒に可視光を照射すると二酸化炭素(CO2)が、有用な一酸化炭素(CO)へ選択的に還元されることを発見した。
近年、金属錯体や半導体を光触媒として用いてCO2を還元資源化する、「人工光合成」と呼ばれる技術の開発が世界中で行われている。実用化されれば、地球温暖化の主因とされるCO2を、太陽光をエネルギー源にして有用な炭素資源へと変換できる。高い活性を示す光触媒には、ルテニウムやレニウムといった貴金属や稀少金属を含む錯体や無機半導体が用いられてきた。しかし、CO2量は莫大なため、手に入れやすい元素だけを用いた新たな光触媒を構築する必要があった。
研究グループは、カーボンナイトライド(炭素と窒素から成る有機半導体)を鉄錯体と組み合わせて光触媒とすると、CO2をCOへと高効率に還元できることを見出した。この光触媒反応では、カーボンナイトライドが可視光を吸収し、還元剤から触媒である鉄錯体への電子の移動を駆動する。その電子を用いて鉄錯体はCO2をCOへと還元する。性能の指標となる各種値は、貴金属や稀少金属錯体を用いた場合とほぼ同程度であり、卑金属や有機分子を用いた光触媒と比べて10倍以上高かった。
今回の研究から、炭素、窒素、鉄といった地球上に多量に存在する材料群を用いても、太陽光をエネルギー源としたCO2還元資源化を高効率に達成できることを初めて実証した。今後は、光触媒としての機能をさらに向上させると共に、地球上に多量に存在し安価な水を還元剤として用いることのできる酸化光触媒との融合を達成することが課題となる。