京都大学大学院の小西堯生博士課程学生らの研究グループは、シロアリの社会において、王と女王だけが貴重な窒素源である尿酸を分解する酵素を発現し、繁殖に必要な栄養を得ていることを世界で初めて発見した。

 アリやハチ、シロアリなど社会生活を営む昆虫では、繁殖を行う王・女王(生殖カースト)と、働きアリや兵隊アリなど繁殖以外の労働に従事する圧倒的多数の個体(非生殖カースト)とのコロニー内分業により社会が成立している。このようなシステムでは、資源配分の偏りにより栄養を王や女王に集中させているが、特定の個体への資源集中を制御するメカニズムについては長年の謎だった。

 研究グループは、繁殖に不可欠なタンパク質の材料である窒素源に着目。窒素化合物は、その代謝産物である尿酸の形で脂肪体という組織に蓄えられる。そこで、日本のヤマトシロアリを用いて、この尿酸の利用に関わる酵素の有無を王・女王とそれ以外のカーストで比較した。

 その結果、尿酸を利用する上で最初に必要な酵素である尿酸分解酵素(尿酸オキシダーゼ)の遺伝子が成熟した王と女王のみで高発現していることが判明。これは、生殖カーストの王と女王だけが自らの酵素を使って尿酸を分解できるということで、分解を阻害すると女王の産卵数が減少したため、尿酸の分解は繁殖に重要であることが示された。さらに、尿酸は働きアリから受け取った物質に由来することも分かった。

 今回の研究は、限られた資源を特定の個体に集中させる分業システムの制御に関わる分子基盤の一端を明らかにした。生物の社会維持メカニズムの理解に極めて重要な意味を持つとしている。

論文情報:【Proceedings of the Royal Society B】King- and queen-specific degradation of uric acid contributes to reproduction in termites

京都大学

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