京都大学の沼田英治教授および森林研究・整備機構森林総合研究所の高梨琢磨主任研究員らの研究グループは、国内で広く見られるクサギカメムシについて、卵のかたまりの中のある卵が孵化を始めて殻が割れた瞬間、発生した振動が周りに感じとられ、一斉に孵化が起こることを発見した。

 鳥やカメ、昆虫などが一か所にかためて産んだ卵の集まりを「卵塊」と呼び、一斉に孵化する例が知られている。しかし、どのような情報が卵の殻を隔てて伝わり、一斉孵化の合図となるのかは不明の場合が多い。

 クサギカメムシは卵を30個程度まとめて葉の表面に産みつける。この卵塊が10~15分ほどの非常に短い時間で一斉孵化することを、以前研究メンバーが報告していた。また、卵塊を一卵ずつに隔離すると全体の孵化に長い時間かかる。このため卵塊が一斉孵化するのは、先に孵化した子から情報が伝わり、それを合図に他の子が直ちに孵化を始めたためと推測。その合図として「卵を割った」振動に着目していた。

 今回研究グループは、隣接した2卵の一方で発生した卵が割れる振動を、他方の卵で「レーザドップラ振動計」により記録。持続時間が 0.003秒という非常に短いパルス状振動が伝わることが判明した。続いて、記録した振動を人工的に再現して孵化前の卵に与えたところ、この振動に速やかな孵化を促す効果があることを確認した。一斉孵化の単純で巧妙なメカニズムが示されたのは今回が初めてという。

 クサギカメムシは東アジアや、近年では欧米でも農業害虫・ 衛生害虫として問題となっており、その効率的な防除が強く望まれている。今回の研究で判明した行動の仕組みが、防除方法開発の基礎となることが期待される。

論文情報:【Current Biology】Egg-Cracking Vibration as a Cue for Stink Bug Siblings to Synchronize Hatching

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