東京大学などの国際共同研究グループは、カルシウムの同位体で新たに提案されている「魔法数34」より多くの中性子を含む原子核の質量を世界で初めて精密測定し、質量の変化量の分析から魔法数34の発現を確証した。研究グループには他に、理化学研究所、大阪大学、東京都市大学、京都大学、九州大学、立教大学、東京理科大学、ノートルダム大学、ミシガン州立大学が参加。
原子核は、含まれる陽子や中性子の個数を変化させたとき、その質量の変化は必ずしも滑らかでない。急な質量変化が現れる中性子や陽子の数は「魔法数」と呼ばれ、量子力学の効果として知られている。具体的な魔法数の数値は、原子核内の陽子や中性子の間に働く力の性質で決まり、自然界に安定に存在しない原子核(不安定核)では、これまで知られていた数と異なる魔法数が予言されている。
研究グループは、新しい魔法数が現れると提案されているカルシウム-54(陽子数20、中性子数34)よりも中性子が多いカルシウム-55、56、57(注)の質量を高効率・高分解能で測定した。原子核質量の変化の割合から、カルシウム-54は同じ中性子数34のチタン-56やスカンジウム-55より安定性が大きく、スカンジウムからカルシウムへ、陽子1個が抜けることで中性子数34が急激に魔法数化していることが判明。一方で、中性子36個のカルシウム-56は、ニッケル-64から安定性の変化は見られず、カルシウム-54の特殊性が実証され、34が新しい魔法数であることを確証した。
今回の結果をもとに、人類未踏の希少原子核を含む全ての原子核の存在範囲や安定性についての理解が深まり、中性子星合体での重元素合成過程やニホニウムを超える超重核の構造解明の進展が期待される。
(注)カルシウム同位体は、中性子が15個から38個までの同位体が存在できることが知られている。半減期はそれぞれ22ミリ秒、11ミリ秒、5ミリ秒と非常に短い。
論文情報:【Physical Review Letters】Magic Nature of Neutrons in 54Ca: First Mass Measurements of 55-57Ca