筑波大学医学医療系の藤本学教授、藤澤康弘准教授らは、京セラコミュニケーションシステム株式会社と共同で、90%以上という非常に高い診断精度を有する皮膚腫瘍人工知能(AI)診断補助システムの開発に成功した。
皮膚疾患において、「視診」は最も重要な診断法であるが、悪性黒色腫(メラノーマ)と呼ばれる皮膚がんは「ほくろ」と見た目が非常に似ているため識別が困難である。古くから画像診断技術による鑑別の研究が行われてきたが、通常、AIの画像識別には一つのカテゴリごとに最低1,000枚の画像を用いた学習が必要であるとされ、皮膚腫瘍の識別のためのシステム構築には14,000枚以上の画像が必要となる。同グループは、診断確定後の質の高いデータと、京セラコミュニケーションシステムが蓄積してきた画像解析ノウハウを駆使し、約6,000枚の臨床写真を用いたAI学習でも、皮膚腫瘍の識別が出来ることを示した。
AI診断補助システムと日本皮膚科学会認定皮膚科専門医13名とで、画像診断テストを行ったところ、専門医の良悪性の識別率85.3%±3.7%に対し、AIの識別率は92.4%±2.1%と有意に高かった。また、良悪性の識別より難しい14種類の詳細な診断の正答率についても、皮膚科専門医が59.7%±7.1%、AIの正答率は74.5%±4.6%であり、こちらもAI診断補助システムのほうが優れていた。
この皮膚腫瘍AI診断補助システムは、十分な性能評価を行ったうえで、数年以内に実際の臨床の現場で使用することを目標としている。