東北大学大学院の近藤倫生教授、宮城県山岳連盟、ファーストアッセントジャパンは、2023年5月1日より環境DNAを利用した山岳域での生物多様性調査を実施、調査結果を公開する。山岳域の環境DNA調査ビッグデータの構築、およびオープンデータとしての一般公開は世界初の試みとなる。
環境DNAは水や土壌などから生物由来DNAを抽出し生息する生物の種類や分布を知る革新的生物調査。日本では核心的手法(MiFish法:魚類対象の網羅的解析法)が開発され、2019年に誰もが貢献できる環境DNA調査網(ANEMONE)を世界に先駆けて設立した。調査データは環境DNA調査のデータベース「ANEMONE DB」で一般公開され世界をリード。調査地点は延べ1,000地点以上、調査回数は5,000回を超えている。しかし、調査対象生物は魚類が中心で、アクセスが容易ではない山岳域の観測データや魚以外の生物のデータは不足している。
今回のプロジェクトでは、クライマーやハイカー、トレイルランナーなど山に慣れ親しんだ山岳愛好家と、山岳研究や環境DNA観測を推進してきた科学者が協力し、山岳での環境DNA調査をかつてない規模で実施可能にすることを目的としている。これまで容易ではなかった山岳地域での生物多様性調査の実現を目指す。
調査は2023年5~6月に全国90地点で実施する。調査地点は参加者が自ら「気になる山」や「好きな山」を選び決定。参加者は現地に赴き、提供された環境DNA調査キットで渓流や湖の水を採取・ろ過する。各地で採取した環境DNAを分析し、DNA塩基配列を獲得する。DNA塩基配列データは東北大学で生物の種類を明らかにするデータ解析を実施。生物多様性データは2023年9月頃にデータベースANEMONE DBにて公開予定としている。
論文情報:【東北大学】クライマーと生態学者が連携し 全国90地点の環境DNA調査を実施 ―「山の人×科学者」で山岳域の健康状態を見守るプロジェクトの始動―(PDF)