理化学研究所、慶應義塾大学、東京都立大学、生命創成探究センターの共同研究グループは、磁気共鳴画像法(MRI)を用いて、小型霊長類であるコモンマーモセットのデジタル脳データベースを開発し、公開した。
小型霊長類のコモンマーモセットはヒトに近い脳構造を持ち寿命も比較的短いため、脳科学研究や老化の研究に用いられる。これまで、コモンマーモセット脳の磁気共鳴画像法(MRI)データベースは、発達や成熟年齢(2歳程度)に焦点を当てたものは公開されていたが、7~8歳以降に起こる老化を含む1~10歳の年齢層のデータベースはなかった。研究グループは、コモンマーモセット脳のマルチコントラスト(多様な生体情報の計測が可能な画像)で、かつ幅広い年齢層・性別・体格をカバーするMRI脳データベースの取得を目指した。
今回、共同研究グループは、健康な216頭(雄88頭、雌128頭、0.8~10.3歳)のコモンマーモセットの脳を対象に MRI の測定・解析を行い、脳科学の前臨床研究に有効なデジタル脳MRIデータベースを公開した。データベースは必要な情報のみのダウンロードや1個体ごとの脳画像の確認が可能で、信頼性の高い詳細な脳構造および機能データとその結合情報や、老化が脳に及ぼす影響に関する本質的な情報を提供する。
このマルチコントラストMRIデータベースは年齢・性別・体格(体重)などの幅広い情報を含んでおり、現時点で世界最大のコモンマーモセット脳の公開データベースだ。年齢・性別・体格などの要因が脳に与える影響を理解するのに役立ち、また、オープンサイエンスとして世界中の脳科学コミュニティの発展に貢献し、研究を加速させることが期待されるとしている。