富山大学などの研究グループは、コバルトの使用量を大幅に削減できるカプセル型FT合成触媒を開発した。

 Fischer-Tropsch(FT)合成は、合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)から軽油などの石油代替燃料および化学品を合成する触媒反応。合成ガスは天然ガス(シェールガス、メタンハイドレートを含む)、バイオマス、石炭、可燃性ゴミから簡単に製造できるため、FT合成反応は産業上インパクトの大きな触媒反応のひとつと言える。しかし、コバルトは資源量の少ない重要金属であり、電気自動車の登場に伴う価格高騰もあって、コバルトの使用量の大幅な削減が求められている。

 従来のFT合成触媒は、触媒担体表面にコバルトナノ粒子が固定された構成。大きなコバルトナノ粒子では分子の長い軽油とジェット燃料が合成され、小さなコバルトナノ粒子では分子の短いLPG、軽質オレフィンが合成される。

 一方、本研究グループは、「コバルト粒子のサイズが製品の分子の長さを決める」というこれまでの定説を覆す、シリカ層に覆われたコバルト系カプセル触媒を開発した。この新規触媒では、小さなコバルトナノ粒子では分子の長い軽油とジェット燃料が合成され、大きなコバルトナノ粒子では分子の短いLPG、軽質オレフィンが合成されることを新たに見いだしたという。

 今回の発見により、従来の担持型FT商業触媒では重量比30~40%であったコバルト含有量を、5~10%以下まで削減することができる。研究グループは、この触媒をFT合成プラントの新規商業触媒として実用化を目指すとともに、FT合成と類似した反応である、二酸化炭素と水素からの液体燃料の合成へも応用を目指すとしている。

論文情報:【Nature Communications】Confined Small-sized Cobalt Catalysts Stimulate Carbon-Chain Growth Reversely by Modifying ASF Law of Fischer-Tropsch Synthesis

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