富山大学大学院医学薬学研究部(医学)の研究グループは、ヒトの妊娠子宮に集まる制御性T細胞のバリエーションが、妊娠初期と後期で変化することを世界で初めて明らかにした。
胎児は母体にとって半異物であるにも関わらず、妊娠が維持される。このシステムを母子免疫寛容と呼び、免疫を抑制する機能を持つ制御性T細胞(Treg)が、妊娠維持に重要な役割を果たすことが知られている。マウスでは、妊娠期に胎児の抗原特異的なTregが母体の子宮に集まる事が知られているが、ヒトでは胎児抗原特異的なTregは未だ同定されていなかった。
そこで、同グループは、今回、ヒトの妊娠初期および後期の両方において、胎児抗原特異的 Tregの発現について検討した。その結果、ヒトの妊娠子宮では妊娠初期より後期で、共通のT細胞受容体を持つTregの出現割合が増加することが明らかになった。すなわち、妊娠後期に胎児抗原特異的な免疫寛容が誘導されている可能性が初めて示された。また、胎児に異常のない妊娠初期の流産では子宮のTreg数の減少が見られる一方、妊娠後期に発症した妊娠高血圧症候群ではTregのバリエーションが正常妊娠と異なることが分かった。
本成果により、胎児が拒絶されずに妊娠が維持される仕組みの一端が解明されたことで、反復流産・妊娠高血圧症候群発症のメカニズムの解明や、新たな治療・予防方法の開発への貢献が期待される。
なお、これらの研究成果により、2018年6月28日の国際学会「American Society for Reproductive Immunology Annual Meeting 2018, Shanghai」にて、津田さやか大学院医員は最優秀発表賞を受賞した。