敦賀市立看護大学看護学部の中堀伸枝助教、富山大学学術研究部医学系の関根道和教授が富山県認知症高齢者実態調査の結果を分析したところ、高齢者の心臓血管疾患が難聴のリスクを高めることを突き止めた。

 富山県認知症高齢者実態調査は富山県が行ったもので、対象者が富山県内の65歳以上の高齢者から無作為で抽出された1,537人。この中で調査への同意を得られた1,303人のうち、認知症がある人や不完全な回答を除く1,039人を対象として分析した。

 それによると、対象者のうち12.1%に当たる126人に難聴があり、心筋梗塞や狭心症など心臓血管疾患の既往歴がある人はリスク指標が1.86と統計学的に有意な上昇が見られた。脳卒中は1.57と数値が上昇していたが、有意な上昇と判定できなかった。高血圧や脂質異常、糖尿病は数値の上昇を見られなかった。

 音は内耳の蝸牛にある有毛細胞で感知され、聴神経から大脳に伝達されて音と認識される。研究グループは心臓血管疾患で血流障害が発生すれば、音の関知能力や認識能力が低下して難聴になるとみている。

 このほか、教育歴が短いほど難聴のリスク指標が上昇する傾向も確認された。教育歴10年以上の人に対し、教育歴6年以下の人は約3倍のリスクを抱えている。研究グループは短い教育歴が喫煙など好ましくない生活習慣や各種の生活習慣病になりやすいとされ、それらが難聴のリスクを高めたのではないかと考えている。

論文情報:【BMC Geriatrics】Association between self-reported hearing loss and low socioeconomic status in Japan: Findings from the Toyama Dementia Survey

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。