東京大学は、国籍や人種、言語、性別、宗教などで区別されることなく、すべての子どもたちがともに学び合うインクルーシブ教育の推進で、東京都国立市教育委員会と協定書を結ぶことを決めた。
東京大学によると、協定書の内容はインクルーシブ教育の実現に加え、東京大学大学院 教育学研究科が国立市の教職員研修に協力することや、東京大学の研究・実習に対して国立市教委が協力することなどが盛り込まれる。期限は2023年度末までだが、1年ごとに自動延長される。
今回の協定はインクルーシブ教育の前に「フル」という文字を加え、「フルインクルーシブ教育」としている。国際連合の障害者権利委員会で2022年、日本政府が障害を持つ児童の分離教育を認めていることに対し、改善勧告が出たのを受けた措置になる。従来のインクルーシブ教育が特別支援学校、特別支援学級での分離教育を含んでいるのに対し、すべての子どもがすべての時間、普通学校、普通学級でともに学ぶ教育を受けることをより明確にした。
東京大学は、2021年9月に目指すべき理念や方向性をめぐる基本方針として UTokyo Compass「多様性の海へ:対話が創造する未来」を公表。これに基づき2022年6月には「東京大学 ダイバーシティ&インクルージョン宣言」を制定し、大学院教育学研究科ではバリアフリー教育開発研究センターの拡充に取り組んできた。今回の協定は、教育大綱に「フルインクルーシブ教育の実現」を掲げる国立市と、インクルーシブ教育の研究の発展とその担い手を育成する事業の一環として締結する。
東京大学は今回の協定で分離別学制度が長く続いてきた日本の教育のあり方に一石を投じられるとしている。
参考:【東京大学】国立市教育委員会と東京大学大学院教育学研究科とのフルインクルーシブ教育事業に関する協定書調印(PDF)