慶應義塾大学大学院の千葉楽斗氏(全国チャンピオン津軽三味線奏者)らの研究チームは、演奏者の質の差と視覚/聴覚の刺激の間に交互作用を確認。また、クラシックピアノでは上位間の演奏者の評価は視覚による判断が優位で、津軽三味線では上位・下位間の演奏者の評価は聴覚による判断が優位であることを示した。

 視覚情報が強い役割を果たすとする西洋音楽対象の研究がある一方、津軽三味線では聴覚情報が重要とされてきた。研究チームは、音楽演奏の評価はどの感覚に依存するのかを探るため、クラシックピアノ・津軽三味線コンクールから演奏者間の質(1位と2位、1位と下位)と動画の視聴条件(映像のみと音声のみ)を制御した実験デザインを組み立て、155名の日本人参加者に優勝者を判断してもらう実験をオンラインで行った。

 実験の結果、相対的な演奏者間の質と視覚/聴覚の刺激に交互作用が確認され、この交互作用は文化横断的に一般的と判明。また、クラシックピアノでは演奏者の質の差が小さい場合(1位と2位)、評価では視覚が優位で、津軽三味線では演奏者の質の差が大きい場合(1位と下位)、評価では聴覚が優位だった。一方、クラシックピアノで1位と下位の場合、津軽三味線で1位と2位の場合の評価では、視覚と聴覚の優位性を見出せなかった。音楽演奏の判断における視覚と聴覚のバランスに文化的な要因があることを発見した。

 今回の研究は、異文化間における音楽認知の新たな体系にクロスモーダル(オーディオ/ビジュアル)な次元を追加し、演奏評価という重要な応用領域において、音楽認知の異文化的普遍性と文化的依存性の間の複雑な交互作用についての証拠となるとしている。

論文情報:【Collabra: Psychology】Sight vs. sound judgments of music performance depend on relative performerquality: Cross-cultural evidence from classical piano and Tsugaru shamisencompetitions

慶應義塾大学

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