東京大学大学院 農学生命科学研究科の金子竣亮修士課程学生と金鉉倍助教、吉岡拓如准教授、仁多見俊夫特任研究員は、限られた地方の労働力で持続可能な森林経営を可能にする地域林業循環モデルを構築した。
東京大学によると、日本の森林の多くは戦後の拡大造林で造成されたが、高度経済成長期以降に国産材が輸入材に押されてシェアが大きく低下した結果、手入れが行き届かずに放置される人工林が増え、森林の高齢化が進んでいる。
研究グループはまず、人工林の樹齢を元に戻すため、人工林の皆伐を進め、1年後に植栽、2~6年後に下刈り、15年後に除伐、20年後に保育間伐、40年後に利用間伐を進めるモデルを構築した。
これを10人の作業員で構成する林業事業体が年間200日、労働に従事することを想定し、この労働力で対応できる候補地を探索して実施に移す。対象から外れた森林は労働力に余裕ができれば、間伐や皆伐を進める。
このモデルを埼玉県の西川林業地に適用したところ、森林蓄積量は皆伐で一時的に減少するものの、40年目ごろから安定に入ると試算された。60年後には全面積の71%を通常の伐採サイクルに戻すことができるとしている。
研究グループは、森林経営管理制度が2019年度にスタートし、市町村単位で地域の森林を長期的に管理することがこれまで以上に求められるようになった中、今回のモデルが地域の森林経営計画策定に役立つとしている。