大阪大学大学院医学系研究科先進融合医学共同研究講座のグループは、同学が開発した新たながん患者向けのケトン食療法を12か月以上長期継続することにより、進行がん患者の生存期間を劇的に改善できることを発表した。

 ケトン食とは、低炭水化物・高脂肪食により体が「ケトン体」をつくりやすくなる食事である。ケトン体は、本来飢餓の際に、肝臓でエネルギー源として生成される物質だが、近年、抗炎症効果を有するなどの様々な生理作用が明らかとなり、注目されている。

 本グループは、ケトン食療法ががん患者にとって有力な支持療法になりうると期待し、2013年からがん患者向けの新たなケトン食療法の臨床研究を開始した。対象は臨床病期Ⅳ期の進行がん患者で、既に2020年に有望な臨床効果を報告したが、長期継続による効果を明らかとすべく、さらに3年間観察し解析した。

 全53名の進行がん患者を、ケトン食継続12ヶ月以上(21名)と12ヶ月未満(32名)の2群に分けて解析を行った。両群の生存率の中央値は、12ヶ月以上群で55.1ヶ月、12ヶ月未満群で12.0ヶ月であり、12ヶ月以上群の方が劇的に生存率の改善を認めた。

 両群の背景因子を揃えるために傾向スコアを用いた逆確率重み付け法を行った結果でも、ケトン食12ヶ月以上継続群は、12ヶ月未満群と比較して生存率が有意に改善していた。

 以上から、長期的なケトン食療法が進行がん患者の生存に劇的な効果があることが明らかとなった。今後は、多くのがん患者が誰でもケトン食療法を実施できるよう環境を整備し、社会全体へのさらなる貢献を目指すとしている。本研究成果は、多くの進行がんの患者に希望を与えるものである。

論文情報:【Nutrients】Long-Term Effects of a Ketogenic Diet for Cancer

大学ジャーナルオンライン編集部

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