国立大学法人東京大学公共政策大学院とPwCコンサルティング合同会社は2023年5月、地政学リスクの企業活動への影響に関する共同研究契約を締結し、研究を開始した。
共同研究のテーマは「地政学リスクへの企業の対応・事業継続の意思決定に関する研究」。近年、米中の大国間競争や、ロシアのウクライナ侵攻などに代表される地政学リスクが顕著となり、世界情勢は悪化の兆しを見せている。日本周辺においても、核・ミサイル戦力を含む軍備増強が急速に進展するなど、緊張が高まっている。企業にとっては、国際政治経済領域の予見可能性が低下する中で、どのように経営判断をしていくかが重要な課題となる。
共同研究では、地政学リスクへの企業の対応・意思決定シミュレーションおよび、その結果明らかになる課題や対応策についての研究を行う。最終的には、企業に対する「行動指針」をとりまとめ企業レベル・業界レベルでの対応策の検討の土台をつくるとともに、政府への政策提言を公表することを目指す。
共同研究者の東京大学公共政策大学院鈴木一人教授は、「これまで自由貿易が国際経済秩序の基本であったのに対し、現代では経済を手段として他国に対して『経済的威圧』を行うことが珍しいことではなくなってきています。そんな中で日本や国際社会における秩序の安定を維持するためにも『経済安全保障』が重要な概念になっています。本研究を通じて、いかにして自由で開かれた国際秩序を維持しながら安全保障を確保していくかを検討したいと思っています」とコメントした。
東京大学法学政治学研究科と経済学研究科は、2004年4月より、公務員をはじめとする政策の形成、実施、評価の専門家を養成する大学院修士課程(専門職学位課程)として「公共政策大学院」を創設。公共政策に関連する大学院である法学政治学研究科と経済学研究科の高い国際的評価を受けている教授陣ができるだけ多く教育を担当できるように、両研究科から独立した組織を作るのではなく、両研究科が連携することがより質の高い教育・研究につながると考えている(制度的には、学校教育法第66条のただし書に基づく「研究科以外の教育研究上の基本となる組織」に該当)。また、高度の専門教育は最先端の研究と切り離せないので、両研究科と公共政策学教育部の連携の要として、同時に「公共政策学連携研究部」という研究組織も設置した。