大阪大学大学院薬学研究科の藤田郁尚招へい教授、名古屋市立大学大学院医学研究科の森田明理教授、元医療基盤・健康・栄養研究所の石井健教授(現東京大学医科学研究所教授)らの研究グループは、ヒトの初代免疫細胞に一次繊毛と呼ばれる細胞小器官が存在することを世界で初めて見つけた。
大阪大学と共同研究を実施している化粧品大手のマンダムによると、一次繊毛は哺乳動物の細胞表面に突出した小器官で、細胞内外にシグナルを伝えるアンテナに似た役割を果たしている。しかし、ヒトの血液から直接採取した免疫細胞に存在するのかについては、確認されていなかった。
研究グループは免疫の司令塔となる樹状細胞をアレルギー性因子で刺激すると、一次繊毛を持つ細胞の数が増えることも見つけた。さらに、アトピー性皮膚炎や乾癬などで炎症状態になった皮膚の表皮角化細胞でも一次繊毛を持つ細胞の数が増えていることから、一次繊毛が皮膚の炎症の制御に関係していることを発見した。
マンダムは一次繊毛の免疫応答機能を解析することにより、炎症疾患のメカニズムや新しい治療薬の開発、産業分野への応用が期待できるとみている。
論文情報:【Frontiers in molecular Biosciences】Dendritic cell proliferation by primary cilium in atopic dermatitis
【Experimental Dermatology】Increase in primary cilia in the epidermis of patients with atopic dermatitis and psoriasis