名古屋市立大学、立命館大学、明治大学、京都大学の共同研究グループは、クローズドループ脳電気刺激を取り入れた新しい歩行リハビリテーション(以下、歩行リハ)を開発し、その効果としてパーキンソン病患者の歩行機能を改善できることを明らかにした。
パーキンソン病では神経変性により運動機能低下があらわれ、特に病状が進行する後期では、歩行障害により日常生活が大きく制限されてしまう。そのため、パーキンソン病患者の歩行障害に対する有効な介入手法が望まれているが、現在パーキンソン病の治療として広く実施されているドーパミン製剤や深部脳刺激では、歩行障害に対する効果が限定的である。
そこで、本研究では、脳の可塑性を誘発できる可能性が示されている経頭蓋電気刺激(tES)を基盤とした新しい歩行リハのシステムを開発した。tESは、頭皮上から微弱な電流を与えることで脳活動を調整する電気刺激療法である。従来、脳への電気刺激は安静状態で実施されていたが、本研究では、これを患者の歩行リズムに同期させた刺激として実現した。つまり、患者毎の歩行に合わせた(個別化した)最適なクローズドループ脳電気刺激で、パーキンソン病患者に対する一般的な歩行リハの効果を高められるか検証した。
比較対象試験として、23人のパーキンソン病患者をランダムにクローズドループ脳電気刺激を行う群と偽の刺激を行う群に割り当て、週2回の歩行リハを5週間実施した後の歩行機能を評価した。結果、電気刺激群では、歩行速度および歩行の左右対称性が有意に改善し、またパーキンソン病患者に特徴的な症状であるすくみ足に対する主観的な感覚にも有意な改善が見られた。
本研究は、これまで有効な介入手段のなかったパーキンソン病患者の歩行障害に対して、個別の歩行パターンに合わせたクローズドループ脳電気刺激が効果的である可能性を示した。このシステムは、非侵襲・非薬物で安全性の高さも利点であり、様々な病態にも臨床応用が期待されるとしている。