九州大学大学院の児玉建氏(博士学生)らの研究グループは、大阪公立大学と共同で、ツクツクボウシのオスに「オーシンツクツク」パートと「ツクリヨーシ」パートを単独で聞かせた時、各パートに対する応答の頻度が異なることと、これらのパートがオスの異なる反応を誘発することを初めて明らかにした。
セミはオスのみが鳴き声を発する動物で、その鳴き声をオス同士の競争やメスへのアピールに使うとされる。中でもツクツクボウシというセミは、その鳴き声のパターンが「オーシンツクツク」から「ツクリヨーシ」へと途中で変化する極めて珍しい特性を持つ。一方、鳴き声を途中で変化させる生物学的意義は不明だった。
研究グループは、ツクツクボウシの鳴き声の「オーシンツクツク」と「ツクリヨーシ」の各パートをスピーカーで再生し、捕獲したツクツクボウシのオスに聞かせた。ツクツクボウシは、オスが鳴いている際に近くにいる別のオスが「ギーッ」という”合の手”を入れる。そこで、異なる音声データを再生して合の手の頻度を比較すると「オーシンツクツク」パートを含む音声の方に多く合の手を入れて応答していた。ツクツクボウシの鳴き声のパターンが途中で変わると、他のオスの行動が変化することが初めて分かった。
今後は、メスの行動反応も評価し、オスの鳴き声が繁殖に及ぼす効果を探る予定。またメスがオスのどのような鳴き声を好むかを調べれば、その複雑な鳴き声の進化に迫れるとしている。また、今回オスが発する合の手のコミュニケーション上の意義は不明だった。オス同士の行動反応の詳細な比較により、オスの鳴き声パートに対する応答の違いの意味の解明が期待される。