幼児期の感情制御が腸内細菌叢と関係することを、京都大学の明和政子教授、藤原秀朗同博士後期課程、大阪大学の萩原圭祐特任教授らの共同研究グループが明らかにした。
幼児期の前頭前野の急激な成熟とともに、自己の欲求などをコントロールする「感情制御」も、幼児期後期(4歳頃)に顕著に発達することが知られる。しかし、幼児期の感情制御には大きな個人差がみられ、それを生み出す要因や機序については未解明のままである。
一方、個人が生涯もつことになる腸内細菌叢の基盤は、生後3~5歳頃までに決まるという。この時期は、感情制御の顕著な発達と一致する。近年注目される「脳―腸―腸内細菌叢相関」のメカニズムからも、腸内細菌叢が感情制御の発達と関連する可能性があるとみた本研究グループは、全国の保育園・幼稚園・子ども園に通う3~4歳の日本人幼児257人を対象に、腸内細菌叢、その背景にある食習慣、そして感情制御の発達を評価し、どのように関連するかを検討した。
その結果、感情制御の発達にリスクを抱える児は、リスクを抱えていない児に比べて、炎症との関連が指摘される菌であるActinomyces属とSutterella属を多く持つことが分かった。また、食習慣においては、感情制御に困難を抱える群では緑黄色野菜の摂取頻度が低く、偏食の割合も高い傾向を認めた。
以上から、幼児期の感情制御の発達リスクには、腸内細菌叢(とくに炎症との関連が指摘される菌叢を持つこと)、その組成に影響を与える食習慣も関連する可能性を示した。今後は、感情制御、腸内細菌叢、食習慣の発達的関連と個人差をより長期縦断的に検証した上で、将来的には、腸内細菌叢や食生活を基軸とした認知発達支援法の新たな開発にもつながることが期待されるとしている。