ユニークで考えさせられる研究に贈られる2023年イグ・ノーベル賞の栄養学賞に明治大学総合数理学部の宮下芳明教授、東京大学大学院情報学環の中村裕美特任准教授が選ばれた。はしやストローに電流を流して味覚を変える研究が評価されたもので、日本の研究者がイグ・ノーベル賞を受けるのは17年連続。
イグ・ノーベル賞は科学ユーモア雑誌「Annals of Improbable Research」の編集者マーク・エイブラハムズ氏が 1991 年に創設。「人々を笑わせ、そして考えさせる研究」に対して贈られる。ノーベル賞と同様に複数の部門があり、毎年5000以上の研究や業績の中から選考され、表彰のプレゼンターはノーベル賞受賞者が行う。2023年の授賞式は9月14日、オンラインで行われた。
宮下教授と研究当時、明治大学大学院博士課程に在籍していた中村特任准教授は、電流の刺激で味覚が変わることに着目、食事のときにその効果を発揮できるよう食器に電流を流すことを発案した。微弱な電流が流れるはしやストローで食べ物や飲み物を口に運ぶと、塩味が強くなったり、金属の味がしたりすることを突き止め、2011年に論文を発表した。この論文は発表から10年間、多く引用され、研究者に多大なインパクトを与えたとして、2021年に「Lasting Impact Award」を受賞している。
宮下教授は「味覚に関する新技術はその後、多方面にわたって発展し、社会実装に至った。そうした広がりに対する期待を込めた受賞だと考え、これからも研究を推進していきたい」とのコメントを発表した。
宮下教授は「電気味覚」以外にも、「白ワインを赤ワインの味に変える」「カカオを異なる産地の(より高級な)味を変える」「毒キノコの味を安全に体験できるようにする」「甲殻アレルギーでも安全にカニの味を味わえるようにする」など多くの味覚メディア技術を開発している。2023年10月末に開催される国際学会では、「口臭を起こさずにニンニクを味わう方法」を発表する予定。