宇都宮大学の博士前期課程1年の坂口ひより氏と岩波礼将特任准教授を中心とした研究グループは、無菌状態でメダカ幼魚を育てることに世界で初めて成功。腸内細菌が腸管の発達と免疫システムの正常な機能に必要であることを証明した。

 腸内細菌のバランスはヒトの健康の維持に重要であり、また免疫機能の低下が腸内細菌のバランスに影響を与える。これは魚類でも同様とされるが、これまで実験的な証明はほとんどなかった。そこで研究グループは、遺伝子操作のしやすい小型魚類モデルのひとつであるメダカを用いて免疫系と腸内細菌叢の相互作用について調査した。

 研究グループは、メダカの卵を無菌状態で孵化させ、滅菌済みの餌を与えることで、無菌メダカ(germfreeメダカ)を作出した。腸内細菌が存在する通常のメダカと無菌メダカを比較した結果、無菌メダカでは生体防御応答に関わる遺伝子群の働き(発現)が低下し、腸管上皮細胞の発達異常が見られた。綺麗すぎる環境で育つメダカは免疫機能が成熟しないことが分かった。

 次に、腸内細菌を含めた水中の微生物に対応できるリンパ球を持たない免疫不全メダカを用いて実験した。その結果、免疫不全メダカでは特定の細菌だけが顕著に増加して腸内細菌のバランスが徐々に失われた。メダカの免疫システムは正常な腸内細菌のバランスの維持に必要と判明した。

 今回の結果から、メダカの免疫機能と腸内細菌は相互に影響を及ぼしあうことが明らかになった。腸内細菌とメダカの免疫機能の関係を示したこの研究成果は、共生進化の理解に役立つ学術的意義に加え、水産業や養殖業において魚類の健康維持にも応用できることが期待されるとしている。

論文情報:【Frontiers in Immunology】Maturation of the medaka immune system depends on reciprocal interactions between the microbiota and the intestinal tract

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