北海道大学大学院の研究グループは、草本植物が有する巧みな身体支持の仕組みを解明、さらに、体を支える仕組みの違いに基づく「木」と「草」の明快で新しい分類方法を発見した。
木本植物である樹木は、自重を支える十分な硬さと太さをもつ。しかし、これとは対極的な「細く柔らかい」草や花などの草本植物が、光合成に必要な高さまで自立した状態を保ちつつ成長できることに、研究グループは着目した。
草本植物は乾燥や伐採に伴う水分の流出によって体が大きくたわむため、体を支える仕組みには内部水分の関与が大きいと予想される。植物の円筒形の構造では、十分な水分の供給で生じる圧力が、植物を上部に引き上げる張力に還元される。研究グループは、この張力が植物の力学的な安定性に及ぼす影響について、力学理論に基づく定式化を行った。
その結果、草本植物は、内部の水分がもたらす張力を活かした構造と軽く細い形状を巧みに組み合わせて、自重によって倒れる現象(倒伏)を回避し、張力が自重を上回ると理論的にはどのような高さでも直立状態を維持できることが明らかになった。
さらに、「張力の影響と自重の影響のどちらが大きいか」という観点から、その植物が「自身の材料的な性質や形状が織りなす固有の硬さ」と「水分によって生じる疑似的な硬さ」のどちらで体を支えているタイプなのかを判別した。その結果、力学的観点から草と木を明快かつ簡単に分類できる、植物の新たな分類則の開発に成功した。
今回の成果は「力学のレンズを通して植物の世界を見つめる」ことで得られた。今後、工学理論と植物学分野の知見を双方向的に活かす新たな学術体系の礎になることが期待されるとしている。
論文情報:【Proceedings of the National Academy of Sciences】Mechanics-Based Classification Rule for Plants