東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所は、2014年に「子どもの生活と学び」の実態を明らかにする共同研究プロジェクトを立ち上げ、同一の親子モニター(小学1年生から高校3年生、約21,000組)を対象に、2015年以降9年間にわたり複数の調査を実施し、12学年の親子の意識・行動の変化を明らかにしてきた。今回、その一環として行った「子どものICT利用に関する調査2023」の結果を公表した。
「子どものICT利用に関する調査2023」は、モニターの小学4年生から高校3年生(9,182名)を対象に実施(2023年2~3月)した。GIGAスクール構想の実現により学校現場では1人1台端末の普及が進み、学校外でもパソコン、タブレット、スマートフォンなどのICT機器を使用する子どもが多く、低年齢化も進んでいる。こうした状況のなかで子どもたちのICT機器利用に関する意識や実態をとらえ、より良いICT利用のあり方について考えることを目的に調査を行った。
調査によると、学校でICT機器を使う頻度は、約3割が「週5日(ほぼ毎日)」、約2割が「週3~4日」と回答。小学4~6年生の利用頻度が高く、高校生の利用頻度が低かった。
利用方法で多いのは「調べ学習」(87.1%)。「考えをまとめて発表」「友だちと考えを共有」などの協働学習も6割を超える。「練習問題を解く」は小学生に多く、「暗記する」は高校生に多いなど、学校段階による使い方の違いもみられた。
利用意識をみると約8割が「ICT機器を使う授業は楽しい」、約6割が「ICT機器を使う授業を増やしてほしい」と回答(とてもそう+まあそう)し、肯定的な意見が目立った。また、教員からICT利用に関する「ICT機器の使い方」「情報の集め方・調べ方」「ルールやマナー」といった指導を受けている子どもほどICT機器利用の効果を強く実感しており、学びを充実させるうえでは教員のかかわりが大切であることもわかった。
一方で、半数以上が「目が疲れる」「インターネットにつながらなくて困る」「ICT機器を壊してしまわないか不安」と回答。また、3~4割が「深く考えて問題を解くことが減る」「学習以外のことが気になって集中できない」と回答しており、効果的に使えているかどうかにも留意が必要。こうした困りごとや不安の多くは、高い頻度で利用している子どもほど強いわけではなく、使っていても使っていなくても存在する。しかし、「使い方がわからないことがある」「文字の入力が面倒」などは利用頻度が低い子どもほど感じていて、使い慣れることで解消される困りごとや不安もある。
プロジェクトでは、これからも子どものICT機器の利用状況を継続して把握し、子どもたちのより良い使い方やより効果的な指導・教材のあり方を提案していく。