中央大学研究開発機構の渡邉正孝機構教授らの研究グループは、モンゴル気象水文環境情報研究所、モンゴル国自然環境・観光省と共同で、衛星による観測から算出したCO2排出量推定値が実際のモンゴル国の報告値と高精度に一致したと発表した。この衛星によるCO2排出量推定値を検証として組み込んだ世界初の報告事例『モンゴル国第二回隔年更新報告書(BUR2)』はUNFCCCに提出された。

 気候変動の要因となる人間活動によるCO2排出量は、各国が国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に報告している。排出量の計算手法は詳細な統計データに基づくが、国によってはデータや専門家がいない。そこで、研究グループは、モンゴルのエネルギー部門からのCO2排出量を推定するため、新システムを開発した。

 これは、従来手法である統計データを用いたボトムアップ手法と、温暖効果ガス観測技術衛星「GOSAT(愛称:いぶき)」の観測データを用いたトップダウン手法の長点を生かしたハイブリッドシステムだ。

 これによる推計では、従来のモンゴル政府の報告値や温室効果ガス排出量データベースEDGARとの差異は数パーセントしかなかった。この結果により、ハイブリッドシステムの有効性が実証され、BUR2は科学的根拠に基づいた透明性や質の高い報告書であることが示唆されたとしている。

 モンゴル前気候変動特使のバトジャルガル・ザンバ博士は、この方法は、地形が複雑で、温度逆転層のような温室効果ガス拡散に局地的な要因が発生しやすい国には有用で、GOSATデータのようなリモートセンシング情報は、費用対効果や透明性が高く、さらに人口が少なく人的資源に乏しいモンゴルでの安定したCO2モニタリングシステムの確立に不可欠と述べている。

論文情報:【Scientific Reports】Enhancing scientific transparency in national CO2 emissions reports via satellite-based a posteriori estimates

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