奈良女子大学、大阪市立自然史博物館による研究チームは桜井市纒向学研究センターの協力によって、奈良県桜井市纒向(まきむく)遺跡から多数出土している古墳時代の土坑から、世界最古のチャバネゴキブリの破片を発見した。
纒向遺跡の調査で検出された土坑は、古墳時代前期前半(3世紀後半・布留0式期)のもの。この土坑から層位ごとに土壌を採取しフローテーションと水洗篩別を実施した結果、検出した多くの動・植物遺存体の中からチャバネゴキブリの破片が発見された。前胸背板の模様からチャバネゴキブリと同定された。
チャバネゴキブリは、永くアフリカ北東部が原産地とされ、船に紛れ込み地中海からヨーロッパに渡ったと考えられていた。英国への到達は19世紀半ば(クリミア戦争の時)で、その後、北米へも渡って多数繁殖し北はアラスカにも分布し、豪州では1893年に最初の記録がある。日本には貿易に伴って江戸時代末期ごろに入って来たという推定による記述がある。
研究チームはチャバネゴキブリが古墳時代から日本列島いたと考えている。理由として、表面の毛がすべて抜け落ちており現生のものが紛れ込んではいないこと。また今回の発見後の文献調査で、池上曽根遺跡(大阪府)の古墳時代中期後半頃(5世紀後半)とみられる土層から発見されたゴキブリが、実はチャバネゴキブリと判明したことだ。
近年になって、チャバネゴキブリのアジア原産説が言われている。沖縄から東南アジアに分布する野外性のオキナワチャバネゴキブリのアジア起源説や、定説では中国南部原産とされるクロゴキブリの日本原産説などがある。研究チームは、いずれも日本原産の可能性があると指摘している。