富山大学の井上真理子氏(博士課程)と大阪樟蔭女子大学の川上正浩教授は、自己制御力の低い学生や、自分の行動のコントロールに他者の助けが必要だと感じている学生は、スマートフォンの使用時間を長いと感じているが、実際の使用時間はそう感じていない学生と変わらないことを明らかにした。

 スマートフォンによるトラブルは単に使用時間が長いことだけではなく、不適切なタイミングでの使用も問題行動の1つとされる。研究では、24時間中のスマートフォンの使用時間に着目。iPhoneを利用している大学生74名を対象に、「合計使用時間」「SNS」「動画およびネット」「ゲーム」の使用目的別に、主観的使用時間および客観的使用時間と、大学生の自己制御力、遅れ(期限付き課題での遅れ)に対する態度との関連について検討した。

 その結果、計画性の低い人や、他者依存傾向にある人は、主観的な動画やネットの使用時間の長さと関連するが、実際の使用時間とは関連を認めなかった。つまり、実際の使用時間を把握できておらず、動画およびネットを実際より長く使用していると見積もっていた。また、遅れに対する態度とスマートフォンの使用時間には関連を認めなかった。

 これにより、大学生の単なるスマートフォンの使用時間の長さが、自己制御力に一律には関連しておらず、むしろ、特定の使用目的に関する使用時間の見積もりにのみ関連していることが異なることが示唆された。研究チームはこの理由として,生活スタイルや同居家族の干渉度合いが関連する可能性を指摘するが、今後の調査が必要としている。今回、スマートフォンの実際の使用時間に着目した研究の重要性が示唆されたとしている。

論文情報:【心理学の諸領域】大学生における自己制御力および遅れに対する態度と iPhone の主観的および客観的使用時間との関連

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