東北大学大学院理学研究科の本堂毅准教授が理論疫学に基づいて一時的な集団免疫が成り立つ社会全体の感染率に感染対策が及ぼす影響を評価したところ、対策の緩和で社会全体の感染率が上昇し、感染がピークアウトしにくくなることを突き止めた。研究成果は日本臨床環境医学会の機関誌「臨床環境医学第32巻」に掲載される。
東北大学によると、新型コロナウイルス感染症は2023年春、季節性インフルエンザと同じ5類に移行され、政府のマスク着用奨励が終了した。政府が脱マスクの影響に関して言及していないことから、本堂准教授はこれが感染状況にどう影響するかについて、理論疫学の手法で評価した。
その結果、社会のマスク着用率が下がるほど感染が終息しにくくなり、社会全体でマスクを着用していたころなら感染しなかった人が感染する可能性が高まることが分かった。マスク着用を換気対策に置き換えても同様の結果が出るとみられ、この結果は新型コロナ以外の感染症が大流行した場合でも適用できるという。
本堂准教授はパンデミックの感染対策は経済と両立できる持続可能性を持つことが重要としたうえで、理論疫学に基づく普遍的な知見に加えて経済理論も総合して取り組む必要があると指摘した。今回の評価結果は行政が総合的な判断を下す際に不可欠な知見になるとしている。