金沢工業大学情報工学科の学生による卒業研究で、「脳波を用いた痛み部位の推定」を行う深層学習モデルが90.8±5.9%の正解率を達成した。

 個人的・主観的な痛みは、第三者による客観的な評価が困難だが、近年、脳波を用いて「どの程度痛いか」の痛み強度を推定する技術が注目されている。一方、脳波を用いて「どこが痛いか」の痛み部位を推定する研究は、未だ不十分である。

 そこで、本研究では、被験者の手のひらに痛み刺激を与えた際の脳波反応を捉え、脳波から痛み部位を推定できるかどうか検討した。脳の体性感覚野をもとに電極を配置し、右手および左手の手のひらに対して軽い痛み刺激を与える試行を計40回行ったデータを解析した。

 その結果、右手への刺激時には左脳のCP3電極で、左手への刺激時には右脳のCP4電極で特に反応の増加が全3名の被験者に示された。

 さらに、この脳波データをもとにした深層学習モデルを作成したところ、各被験者データで90.8±5.9%の高い正解率を達成した。これにより、脳波のパターンが痛みの局所化(どこの部位の痛みか)と強く関連していることが明らかとなり、被験者の特性によらず脳波から痛みの部位を推定する汎用的な学習モデルの有効性が示唆された。

 今回は手のひらという限定された領域に対する解析結果にすぎないが、今後、異なる体部位への痛み刺激に対する脳波応答も広範囲にわたって収集・解析することで、脳波を用いた客観的な痛み部位の推定技術は更なる進展が期待される。本技術の臨床的応用が実現すれば、痛みを自分で訴えられない入院患者や幼児などに対して迅速かつ適切な処置を施すことが可能となると考えらえる。

参考:【金沢工業大学】【痛みを訴えられない入院患者や幼児などへの臨床的応用に可能性を示す】脳波を用いた痛み部位の客観的推定で90%前後の正解率を達成。金沢工業大学情報工学科の卒業研究で

大学ジャーナルオンライン編集部

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