人々の幸福度に関連する最も重要な要因が暮らし向きであることが、東京大学の石田浩特別教授ら社会科学研究所研究グループの分析で分かった。既に社会経済的資源を持っている人が将来のより大きな幸せのために現在の幸せを犠牲にすることに寛容であることも明らかになった。
東京大学によると、分析は2007年から毎年実施している「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」の追跡調査、2019年から新たに始めた「リフレッシュサンプル調査」の2023年調査結果が対象。人々が感じる幸福度と「将来のより大きな幸せのために現在の幸せを犠牲にすることができるのか」という問いに対する回答分布や、関連要因を分析した。
その結果、幸福度と関連する最も大きな要因が暮らし向きで、経済的に豊かであるほど幸せを感じる度合いが高くなっていたことが分かった。暮らし向きに次ぐのが、主観的な健康度で、3番目が社会的なつながりだった。
社会的なつながりは何か問題が起きたときに相談したり頼んだりできる人がいるほど、人々の幸福度を大きく上昇させる傾向がある。このため、研究グループは社会的な支援や手助けを得られるネットワークの構築が幸福度を高めるとみている。
現在の幸せを犠牲にできるかについては、大卒学歴、専門管理職、暮らし向き、社会的つながりが相対的にウエートの大きな要因になっており、社会経済的資源をすでに持っている人が、現在の幸せの一部を犠牲にすることに対してより寛容であるとみられる。
今回の調査では、このほか「誰が時間に追われていると感じやすいのか」「何歳までに結婚したいか、子どもを持ちたいか」「希望する介護」というトピックについても分析している。
参考:【東京大学】「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査 2023」分析結果報告――パネル調査からみる幸福、タイムプレッシャー、希望の結婚・出産年齢、希望の介護――(PDF)