大阪大学大学院の吉村華子氏(博士後期課程)らの研究グループは、気管支喘息の病態や診断に有用な新規バイオマーカー(BM)を同定した。簡便な診断が可能になれば治療法の選択に有効という。
WHO報告では世界の喘息患者は約3億人、うち25万人が死亡している。国内調査では成人の喘息有病率は4.2%で増加傾向にある。気管支喘息は、肺のアレルギー疾患の代表として認知度は高いが、病態や診断法など課題も多い。とりわけ、複雑多様な病型(表現型)や疾患活動性を捉える新規BM開発が不十分だった。
研究グループは、細胞外小胞(エクソソーム)の網羅的解析により、血液中に浮遊するエクソソーム(血液1滴)から3000種類以上に及ぶ膨大な蛋白を捉えた。また、喘息患者肺も同時に網羅的解析を加える統合解析により、喘息病態と密接に関わる新規BMを世界で初めて同定した。特に、ガレクチン10を含む新規BM分子は、喘息診断や気流閉塞(粘液栓)だけでなく、喘息病態と密接に関わるエトーシス(好酸球の細胞死)と相関した。
さらに、喘息に合併することが多い好酸球性副鼻腔炎(ECRS)でも、同様のBMが診断のみならず、病勢(疾患活動性)と相関していた。従来、喘息用BMとして血中好酸球数が主に活用されてきたが、エクソソーム中ガレクチン10は、好酸球数に優る新規BMであることが示唆された。
今回見出された新規BMは、複雑多様な喘息の診断だけでなく病態解明や治療法開発への有用が示唆された。また、炎症性疾患における好酸球性炎症の同定にも応用可能という。さらに、難病や悪性疾患でもリキッドバイオプシー(低侵襲性の液体生検)として有用である可能性が示唆されたとしている。