近年、免疫チェックポイント阻害剤を用いたがん免疫療法による治療の進歩が目覚ましい。

 本邦において肺癌に対する免疫チェックポイント阻害剤として初めて認可されたのは、抗PD-1抗体のニボルマブだ。がん細胞は、Tリンパ球上に発現するPD-1という分子に、PD-L1やPD-L2といった分子を結合させて、がんを攻撃しようとするTリンパ球の活性化を抑制する(がんの免疫回避機構)。抗PD-1抗体は、自らがPD-1と結合することにより、がん細胞上のPD-L1やPD-L2がPD-1と結合するのを阻害し、Tリンパ球を活性化状態に維持して抗腫瘍効果を発揮する薬剤だ。

 この治療は非常に強力である反面、限られた患者のみに効果が認められることや、免疫療法ならではの特徴的な副作用を起こすことなど課題も残されている。免疫チェックポイント阻害剤の体内薬物動態をモニタリングし、治療の効果予測や副作用のマネジメントを行うことが必要だ。

 こうした中、大阪大学の研究グループは、ニボルマブを投与された肺癌患者の血液から、Tリンパ球上のPD-1の発現やニボルマブの結合の状態をモニターする方法を開発した。その結果、副作用や治療無効などの理由で治療をやめた後も、20週間以上の長期間にわたり、ニボルマブがTリンパ球に結合していることがわかった。

 肺癌では、ニボルマブ投与中止後に抗がん剤を投与されることが多い。本研究成果により、ニボルマブ中止後もその治療効果が一部残存し、次治療の抗がん剤治療に相乗的に働く可能性が示唆されたとともに、副作用の観点では、その影響を長期間モニタリングする必要があることも示された。抗PD-1抗体の体内薬物動態の評価は、次治療の選択や副作用のマネジメントに有用であると期待される。

論文情報:【JCI insight】Clinical implications of monitoring nivolumab immunokinetics in non–small cell lung cancer patients

大阪大学

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大学ジャーナルオンライン編集部

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