秋田大学の飯島克則教授の研究グループは、新型コロナ禍が発生して3年目までのデータを集計し、秋田県における新型コロナ禍の消化管がん診断に及ぼした影響を全国に先駆けて報告した。その結果、診断の遅れによる影響は確認されなかった。
新型コロナ禍の初期(2020年)には、がん検診、内視鏡検査が全国一律に中断。未発見のがんが、その後遅れて診断されることが懸念された。特に秋田県はなどの消化管(食道、胃、大腸)がんの死亡率が長年全国ワースト1~3位で、検査中断の影響が最も顕著に出る地域と考えられた。
研究グループはこれまで、秋田県で診断されるがんの 80~90%をカバーする秋田県院内がん登録のデータを用いて、新型コロナ禍の消化器がん診断に及ぼす 1年目、2年目の影響を報告。今回、3年目までのデータを集計し最終報告した。
その結果、秋田県では大腸がん総数は新型コロナ禍の前(2017~2019)が4822件、後(2020~2022)が4907件、また、発見される大腸がんのステージの割合も前後で変化がなく、新型コロナ禍による診断の遅れは確認されなかった。
食道・胃がんは、もともとの減少傾向のため(特にヘリコバクター・ピロリ菌感染減少のための胃がんの減少)、新型コロナ禍後 3 年間の診断件数は減少したまま(前4605件、後4152件)。発見されるがんのステージの割合も前後で変化は認めず、新型コロナ禍による診断の遅れは確認されなかった。
日本では、新型コロナ禍初期の感染拡大状況が比較的軽く、検査体制が早期に復旧した。そのため秋田県では診断の遅れを認めなかったが、国内全体でも同様と推測する。今回の結果は、今後の感染症流行下でのがん診療体制維持のために重要なデータとなると述べている。