東京工業大学の高木泰士教授らの研究チームは、能登半島地震における津波の増大メカニズムに関する研究成果を発表。第一波に続く二次的な散乱波的な短周期の津波が、飯田湾沖の浅い海域で重なり合って増大したと推測した。

 令和6年能登半島地震では日本海側の広い範囲で津波到達が確認されたが、能登半島先端の飯田湾では特に高い津波が襲来し、石川県珠洲市や能登町の住宅地、飯田港や鵜飼漁港などインフラに甚大な被害をもたらした。研究グループは今回、地震発生後の津波の伝わり方に関し数値解析を行い、津波増大メカニズムを検討した。

 その結果、飯田湾沖に舌状に広がる浅い海域(飯田海脚)に津波のエネルギーが著しく集中し、さらに、第一波の津波が湾内に伝わった後、二つの岬で散乱波が生じて回折や湾内での反射を引き起こし、特定の場所で二つ以上の津波が重なり合い、増大したことを明らかにした。

 飯田湾に甚大な被害をもたらしたのはかなり短周期の津波であり、直接的な被害は第一波によるものではなく、それに続く二次的な津波によるものであった。この二次的な津波は散乱波的な性質を有し、個々のエネルギーは第一波よりも小さかったと推測されるが、短周期の津波がさまざまな方向から襲来し重なり合うことで、局所的に津波が増大したと考えている。

 津波による被害は地震の規模や断層の位置・大きさといった地震自体の要素に加えて、津波が向かう先の局所的な条件に大きく左右される。ただし、飯田湾内で津波被害が相対的に軽微だった場所は津波の重なり合いが偶然にも生じなかった場所と考えるべきで、津波に対して安全な場所であったと考えるのは適切ではないと指摘している。

論文情報:【Ocean Engineering】Locally amplified tsunami in Iida Bay due to the 2024 NotoPeninsula Earthquake

大学ジャーナルオンライン編集部

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