株式会社ユーグレナと武蔵野大学の田中健一郎准教授は、共同研究により、抗酸化作用をもつ化合物であるエルゴチオネインが、パーキンソン病の発症と進行に対する予防効果を有する可能性を示す研究結果を確認した。
活性酸素種の過剰産生が引き起こす酸化ストレスは神経細胞死の主な原因となる。神経細胞死はパーキンソン病の発症や増悪に関与しているため、パーキンソン病の予防法として酸化ストレスによる神経細胞死を予防できる化合物が有望と考えられている。
キノコ類や一部の微生物に含まれる天然アミノ酸のエルゴチオネインには抗酸化作用があり、活性酸素種が引き起こす細胞ダメージを回避できる生体保護機能が注目されている。しかし、パーキンソン病をモデルとした実験系におけるエルゴチオネインの細胞保護機能に関する知見はなかった。そこで、研究グループはエルゴチオネインの有効性の解析・検証を行った。
研究では、不死化視床下部神経細胞(遺伝子導入技術によりほぼ無限の増殖能を持つ細胞)を培養し、そこにパーキンソン病様症状を誘発する神経毒6-OHDAを添加すると、活性酸素種の過剰産生と神経細胞死の誘導を確認した。一方、エルゴチオネインも同時に添加した場合には活性酸素種の過剰産生が抑制され、6-OHDA依存の神経細胞死も顕著に抑制された。これにより、パーキンソン病の発症と進行を予防する効果的な方法の1つになる可能性があると考えられた。
今後は、エルゴチオネインの神経細胞保護に関する詳細な分子メカニズムの解明や、エルゴチオネイン高含有食品の開発や商品化を推進し、パーキンソン病などの病気の予防やヒトの健康維持の実現に取り組むとしている。
論文情報:【Cells】Ergothioneine Prevents Neuronal Cell Death Caused by the Neurotoxin 6-Hydroxydopamine