東京大学の浜根大輔技術専門職員は、鉱物研究家の田中崇裕氏、新町正氏と共同で、熊本県美里町から新種の鉱物(=新鉱物)「不知火鉱(しらぬいこう)」を発見した。採集地は同グループがかつて発見した日本唯一のプラチナ系砂白金の鉱床で、同鉱床での新鉱物発見は3種類目。
プラチナ系白金族元素は触媒等で利用用途が多く、資源として渇望されてきた。研究グループは2019年、熊本県美里町で日本初・唯一のプラチナ系砂白金鉱床を発見した。同鉱床から「皆川鉱(みなかわこう)」と「三千年鉱(みちとしこう)」という2つの新鉱物が発見され、他の新鉱物発見が期待されていた。
研究グループは今回、美里町山中を流れる釈迦院川の支流から砂白金を採集し、電子顕微鏡を用いて粒子を一粒単位で詳細に分析。その結果、硫銅ロジウム鉱という既知の鉱物と似ているが、組成が異なる新鉱物「不知火鉱」を発見した。不知火鉱は、銅(Cu)、ロジウム(Rh)、硫黄(S)を主成分とし、スピネル型と呼ばれる結晶構造をもつスピネル族の新鉱物。不知火鉱は砂白金粒子になかば抱きかかえられるような形で産出する。
不知火鉱は熊本県の古称「火の国」の伝承にちなんで命名され、国際鉱物学連合の新鉱物・鉱物・命名委員会から正式に承認された。
美里町の同鉱床で発見した新鉱物は不知火鉱で3種類目となる。プラチナ系砂白金の鉱床で3種類もの新鉱物が見つかったことは、世界的にも特異という。一方、鉱床規模は小さく、現時点では資源利用は難しい。しかし、プラチナ系白金族元素の希少な国内資源という重要性から、埋蔵量や成因についてさらに詳しく調査する予定としている。