首都圏の平均家賃は2018年の総務省住宅・土地統計調査で月額約8万円。これに対し、道府県が運営する県人寮に入居すれば平均家賃が月額約3万2,000円で済む。地方女子の進学の選択を広げる活動をしている東京大学発の学生団体・特定非営利活動法人「#Your Choice Project(ユアチョイスプロジェクト)」が東京都と一部神奈川県にある道府県人寮を調べたところ、計52ある道府県人寮の約6割が男子学生専用であることが分かった。
#Your Choice Projectによると、東京都と一部神奈川県には全国35の道府県が道府県人寮を置き、受け入れ可能な学生の総数が3,316人に上る。約半数の道府県は男子学生専用の寮しかなく、52舎の約6割が男子学生専用。その結果、受け入れ学生数は男子学生2,627人に対し、女子学生が689人にとどまっている。男女両方を受け入れていても複数の寮を設けながらも女子学生の受け入れを行う寮は1つだけという事例が長野県・岐阜県・愛知県・鹿児島県で見られ、総受入数では大きな偏りがある。
#Your Choice Projectが男子学生だけを受け入れている17自治体の24舎に問い合わせたところ、「女子学生の受け入れ予定がある」と答えた施設はゼロ。女子学生受け入れ予定のない15舎に対して、受け入れが進まない理由・ハードルについて聞き取り調査をしたところ、浴室の改修や建て替え、女性職員の採用などで資金面のハードルが高いことを挙げる声が最も多かった。
また「入寮希望者の見込みが低い」「設備が古く女子学生は好まない可能性が高い」「東京に出る女子学生は裕福な家庭が多いため需要が低い」等、4舎が女子学生の需要見込みの薄さを挙げた。その他「コロナ禍により議論進行が滞っている」「寮の独自性が損なわれると困る」「見直しをするならLGBTQの人々にも配慮が必要になり、それにあたってマンション型へ移行してしまうと元々目指している形の共同生活が実現できない」という声もあったという。
#Your Choice Projectは、男子学生と女子学生の間で、首都圏の大学に進学する際にこれだけの機会格差が生じている現状は、明らかに深刻なジェンダーギャップであると指摘。資金面のハードルは運営母体だけでなく自治体や国からの資金面の補助も検討すべきとしている。また、東京大学が地方出身の女子学生に月額3万円の家賃補助を実施しているように、女子学生を対象とした住まい支援・奨学事業を実施する等、代替手段を取ることも提案している。