東京大学・同大学院と長崎大学大学院の研究グループは、人工的に孵化、飼育した無毒のトラフグ稚魚に対し、テトロドトキシン(TTX)を混ぜた餌を与えると腸内細菌叢が変化することを初めて明らかにした。
フグは、飼育実験により餌を通じて体内にTTXを蓄積する。TTXは、動物の神経細胞にあるナトリウムチャンネルに結合して神経伝達をブロックする強力な神経毒だが、細菌に対する阻害効果はないとされてきた。しかし近年、一部の細菌に対してTTXが増殖阻害効果を示す可能性が報告されたことから、細菌に対しても何らかの作用機序を示す可能性がある。
そこで研究グループは、小型水槽による再現性の高い海産仔魚の飼育実験技術と微量サンプルからの細菌叢解析技術を用いて、トラフグの稚魚にTTXを混ぜた餌を約1週間与える飼育実験により、腸内細菌叢が変化するかどうかを調べた。
その結果、腸内細菌叢を構成する主要細菌種の組成は、TTXの有無に関わらず比較的安定していたが、一部の細菌種の組成に違いが生じることが分かった。腸内細菌叢は、フグの生育や健康維持に重要な働きを持つと考えられることから、こうした細菌種組成の変化は腸内細菌叢の機能に変化をもたらす可能性がある。
こうした腸内細菌叢の機能的な変化が、フグに対して良い影響を与えるのか悪い影響を与えるのかについては現時点では不明。今後は、こうした点について明らかにすることで、より良い飼育環境の構築や、自然環境における生態解明を通じた適切な資源管理につながることが期待されるとしている。