換気の悪い屋内環境では、二酸化炭素濃度の上昇が日中の眠気の原因となると言われていたが、因果関係は不明だった。東北大学大学院の研究チームは今回、二酸化炭素が眠気を引き起こしている確かな証拠を得たと報告した。
換気の悪い空間では、環境中の二酸化炭素濃度は容易に5,000 ppmにまで達する。健康面での安全のため、建築物環境衛生管理基準では1,000 ppm以下、事務所衛生基準規則では5,000 ppm以下に抑えるよう基準値が定められている。しかし、高い環境二酸化炭素が眠気を引き起こすかについては結論が出ておらず、環境中の二酸化炭素濃度と日中の眠気との間の関係を厳密に測定した研究は行われていなかった。
そこで研究チームは、厳密に二酸化炭素濃度を制御した環境下で、睡眠障害の臨床的診断に使用される睡眠潜時反復検査を用い、客観的な指標によって日中の眠気を測定した。参加者11人には睡眠不足にならないように、検査前の1週間は7時間以上の十分な睡眠時間を取ってもらった。その結果、日中に2時間毎に4回行われる、各30分の検査中に5,000 ppmの比較的高濃度の二酸化炭素にさらされると、日中の眠気が有意に強くなった。また同様に、主観的な眠気も有意に強くなった。
今回の研究結果は、日中の眠気に対する二酸化炭素の効果についての最終的な結論と、各法令における二酸化炭素濃度基準についての科学的に妥当な根拠を提供するものだ。今後、二酸化炭素濃度の調節により、職場や自動車運転時に集中しやすい眠気が起こらない環境や、逆に自宅や宿泊先あるいは仮眠室などで眠りやすくなる環境をつくるための客観的な根拠となることが期待されるとしている。