大阪公立大学の富山貴美特任教授らは、漢方薬やハーブティーの素材から、認知症を予防し脳を若返らせる食材を独自の製法で開発した。

 認知症は、異常なタンパク質が脳に蓄積し、神経細胞が変性することで発症する。神経細胞が死んでしまった後は、いくら異常タンパク質を取り除いても効果がないため、神経細胞が元気なうちから認知症を予防することが重要である。

 さまざまな条件が求められる認知症の予防薬は開発が難しいため、本研究では、医薬品ではなく食品に着目した。東洋の生薬や西洋のハーブなど天然の素材から認知症への効果が期待できるものを探索し、ハワイのハーブティーの素材であるママキ、漢方薬の素材である石菖と酸棗仁にたどり着き、ママキについては大学発ベンチャー セレブロファーマ株式会社と共同で、石菖と酸棗仁については帝人株式会社も共同研究に加わり、産学連携で試料を調製した。

 ママキ葉、石菖葉、酸棗仁の熱水抽出物(エキス)を、アルツハイマー病や認知症のモデルマウスに1カ月間経口投与したところ、脳の病理が改善し、認知機能や運動機能が回復することを見出した。さらに、単純に破砕しただけの粉末を用いた場合は、エキスよりも薬効が強まり、特に酸棗仁の単純破砕粉末は、モデルマウスの認知機能を正常マウスと同等かそれ以上のレベルにまで改善させることが確認された。

 そこで、正常な老齢マウスにも酸棗仁の単純破砕粉末を1カ月間与えてみたところ、細胞老化を抑制し、若いマウスと同レベルにまで認知機能を向上する効果が確認された。この結果から、酸棗仁の単純破砕粉末は、認知症を予防するだけでなく、脳の老化を抑える働きも持つことが示された。

 これらの食材・製法は、中高齢者が自らの判断で購入・服用できる認知症予防食品の開発に有用であり、認知症ゼロ社会の実現に寄与することが期待される。

論文情報:
【GeroScience】Hawaiian native herb Mamaki prevents dementia in four different mousemodels of neurodegenerative diseases
【Nutrients】New Value of Acorus tatarinowii/gramineus Leaves as a Dietary Source for Dementia Prevention
【eLife】Simply crushed Zizyphi spinosi semen prevents neurodegenerative diseasesand reverses age-related cognitive decline in mice

大阪公立大学

2022年4月、大阪府立大学と大阪市立大学を母体とした「大阪公立大学」が開学

大阪公立大学は、2022年4月より、大阪府立大学と大阪市立大学が統合し開学しました。ともに約140年の歴史ある大学で、12学部を擁す総合大学で、学生数は約1万6千人。全国最大規模の公立総合大学です。大都市大阪に人や社会、都市、世界を結びつける新たな"知の拠点"[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。