長崎大学熱帯医学研究所国際保健学分野の伊東啓助教と山本太郎教授は、静岡大学工学部の守田智教授と共に、複雑ネットワークと母子感染を同時に考慮した性感染症の数理モデルを開発・発表した。

 性感染症は主に、性感染と母子感染の2つのルートで感染が拡大される。これを踏まえた上で、性感染症の拡散を再現する数理モデルを構築できれば、効果的な拡散防止戦略を提案することが可能になると考えられる。

 今回、同グループは世界で初めて、世代を超えて感染を広げる性感染症に対して、性接触の複雑なネットワークを踏まえて、性感染と母子感染を同時に考慮した拡散予測を可能にする数理モデルの開発に成功した。既存の研究で示された性接触頻度を数理モデルに導入したところ、一人あたりの感染者が生み出す2次感染者数の平均値(基本再生産数)は性感染に大きく影響を受けたが、意外にも母子感染はほとんど寄与しないことが明らかになった。この結果は、母子感染予防だけでは感染症の蔓延を抑制することができないことを示している。しかしながら、常に母子感染由来の感染者が存在するため、母子感染を防止することは無意味ではないことも数理モデルは同時に示している。

 本成果により開発された数理モデルは、HTLV-1やHBVといったウィルス性の性感染症の拡散予測に役立つことが期待される。

論文情報:【Applied Mathematics and Computation】Demography of sexually transmitted infections with vertical transmission

大学ジャーナルオンライン編集部

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