神戸大学大学院の内山愉太助教らと琉球大学の共同研究グループは、緑地や水辺などの自然への訪問頻度に関する不平等について、年齢や収入、子どもの頃の自然体験などの社会経済的要素と環境要素を統合的に分析し、各年齢層において訪問頻度に影響を与えることが予想される要素を明らかした。
緑地や水辺へのアクセスにおける不平等は、環境正義や環境格差の観点から重要な問題となっている。質の高い自然環境へのアクセスは基本的人権の一部であり、その重要性は高いが、多くの政策では優先度が低く扱われがちだ。これは、経済成長によって間接的に解決できると考えられていることが一因で、環境格差の現状はまだ十分に把握されていない。
研究グループは、年齢、収入、子どもの頃の自然体験など、環境要素に加え社会経済的要素も統合的に分析し、異なる年齢層における各要素の重要性を解析。具体的には、阪神圏および東京圏を対象にアンケート調査(回答者3,500名)と結果の解析をした。
その結果、居住地周辺の農地、買い物先近くの草地、通勤先近くの落葉樹林などの存在が、緑地・水辺への訪問頻度と関連性があることを特定。また、若年層では自然体験の不平等が、中高年層では自然との精神的なつながりの格差が、自然訪問の頻度格差と特に関連していることを解明した。
農地や森林などがモザイク状に分布する里山環境は、アクセス性が高く、快適な温熱環境を備えた魅力的な伝統的景観として、自然訪問の頻度格差を是正するポテンシャルがある。今後、本研究成果により年齢階層の特性に応じた都市環境整備や環境教育への応用が期待されるとしている。