山形大学ナスカ研究所とIBM研究所の共同研究グループは、AIで加速化した調査により、わずか6か月間の現地調査で新たに303個の新地上絵を特定。これで確認済みの地上絵数はほぼ倍増した。
ユネスコ世界文化遺産のナスカ地上絵は描かれたのは2000年以上前、発見は1920年代だ。動物や植物、道具などの具象的な地上絵が430個確認された。そのうち318個を山形大学ナスカ研究所がリモートセンシング技術(人工衛星、航空機、ドローン)を用いて発見した。しかし、約400平方キロメートルの広大な地域のため、高解像度航空写真の目視確認や全域の現地調査は時間的に困難だった。
そこで共同研究グループは、少量のデータ(トレーニングデータ)でも高いパフォーマンスを発揮する強力なAIモデルを開発し、膨大な量の空撮写真を分析した。その結果、AIモデルが提示した地上絵候補から、平均36件の精査で可能性が高い候補1件を発見し、合計1309件の有望な候補を特定。その約4分の1を現地調査した結果、6か月間で303件の新たな具象的地上絵を発見。既存の具象的地上絵の数はほぼ倍増した。
発見した面タイプの具象的な地上絵は、線タイプの地上絵とは様式・規模・分布やモチーフに差があった。線タイプは直線と台形のネットワークに沿い、面タイプは曲がりくねった小道に沿った分布だ。線タイプの具象的な地上絵は共同体の儀礼用に制作され、面タイプの地上絵は小道から見える「掲示板」で、主に家畜や首級に関連する活動の共有目的で制作されたと考えられるという。
研究グループは今後、AI能力の向上、地上絵候補地の現地調査の継続、地上絵の分布に関する情報解読、地上絵の保護活動などに取り組んでいくとしている。
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