山形大学の山澤泰氏(理学部4年)と福島大学の高木俊人特任助教らの共同研究グループは、完全な地下生活のため直接観察や飼育が難しいアズマモグラの親子判定に、先行研究の遺伝マーカーが利用可能であることを示した。謎が多いモグラの繁殖様式解明の手掛かりとなることが期待される。

 モグラ類は北海道を除く日本列島のほぼ全域に生息している。しかし、地下適応した小型哺乳類であるため飼育研究による繁殖に関する知見が少ない。こうした動物の繁殖生態を解明するため、遺伝マーカー(マイクロサテライトマーカー)を用いた解析がある。東日本を中心に生息するアズマモグラを対象とした遺伝マーカーが先行研究で開発済みだったが、個体識別や親子判定に利用可能であるかは不明だった。

 そこで研究グループは、飼育中に出産した母親とその仔3個体を用いて、先行研究の遺伝マーカーが、個体識別や親子判定に利用可能かを検証。さらに父親の遺伝子型を推定し、交尾に関わったオスの個体数を推定した。

 その結果、先行研究で開発されたマイクロサテライトマーカー10遺伝子座は個体識別が十分可能な多型性があることが確認された。また、研究で対象とした親子について、父親の遺伝子型を高い確率で推定でき、仔3個体の父親はオス1個体のみと推定された。

 今回の研究により、アズマモグラにおいて親子判定が可能なことが示された。今後、計画的に妊娠メスなどを捕獲、分析できれば、一夫一妻なのか、一夫多妻なのかなど、これまで大きな謎とされてきたモグラの繁殖様式解明の手掛かりとなるとしている。

論文情報:【哺乳類科学】アズマモグラ(Mogera imaizumii)の繁殖生態解明に向けたマイクロサテライトマーカー解析の有用性

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