電気通信大学大学院 情報理工学研究科 機械知能システム学専攻の新竹純准教授らの研究グループは、植物の成長による力で駆動する植物ロボットの開発に成功した。
急速に発展するロボット分野において、環境への影響を最小限に抑えながら資源を有効利用するためには、環境に優しく持続可能なロボットの開発が不可欠である。
本研究では、環境に優しく持続可能なロボットの実現に向け、植物に着目した。植物は、いつも通る道に生えている草が、気づかないうちにずいぶん伸びているように、成長によって物理的な変位と力を着実に生み出しており、これをロボットのアクチュエータ(エネルギーを動作出力に変換する装置)として利用することを考えた。
植物に基づいたロボットを設計・製作するため、まずカイワレダイコンをモデル植物として、その成長によって生じる変位、力、速度などのアクチュエーション特性を解析した。この知見を用いて、地上を回転移動するロボットと、物体を掴んだり保持したりするグリッパーの2種類のロボットを設計・製作した。そして、動作実証の結果、これらのロボットが実際に移動し、物体を持ち上げたり置いたりできることを確認したという。
本研究で実証された、植物をアクチュエータとして移動や物体の操作を行うロボットは、やがて枯れて土に還ることから、生分解性を持っており、環境への優しさと持続可能性を備えたロボットである。植物は多種多様性も持ち合わせており、本研究成果を応用することで、これまでにない新しいタイプのロボットの実現も期待される。“植物は地面に根を張り動かない”という固定観念を、工学的な手法で移動能力を与えることで覆した、画期的な研究成果といえるだろう。