電気通信大学大学院、名城大学、東京科学大学の研究グループは、生体模倣型の水中ロボットの新しい駆動方法として、直接駆動方式を採用した魚ロボットを開発。実際の魚類と同等かそれ以上の速度を達成した。
従来の生物模倣型の水中ロボットは、動力源として電磁モータや柔らかい人工筋肉を用いたものに大別される。電磁モータは出力や応答性に優れるが、それを基にしたロボットは、ギアなどの追加部品を多数用いるため、構造の複雑化、重量の増加、衝撃への耐久性低下を招く懸念があった。一方、柔らかい人工筋肉のロボットは、単純な構造で生物のような柔軟性を持つが、出力や応答性が低いという問題があった。
研究グループは、電磁モータによって単純で柔軟な構造を直接駆動することで高い遊泳性能が実現できると考え、生物模倣型の水中ロボットの新しい駆動方法として、直接駆動方式を採用した魚ロボットの設計・製作・解析を行った。
その結果、魚ロボットは最大で2.6m/sの速度で遊泳できた。これは、速度を体長で割った値である体長比速度に直すと6.3体長/秒であり、既存の生物学上のデータを参照すると、実際の魚類と同等かそれ以上の性能であると判明。また、直接駆動方式では、電磁モータの回転角を広く取れるため、体を瞬間的に大きく変形できる。これによって、現存する水中ロボットの中で最大の旋回速度(その場旋回1450º/s)を達成した。
以上により、直接駆動方式が生物模倣型の水中ロボットを高性能化する上で、有効な新技術であることを実証した。今回の成果を応用することで、さまざまな場面に対応した多様な形態を持つ高性能な水中ロボットの実現が期待されるとしている。
論文情報:【npj Robotics】Agile robotic fish based on direct drive of continuum body