宮崎大学を中心とした共同研究グループは、亜熱帯域から温帯域にかけて広域に生息するサンゴの遺伝子解析により、サンゴの地域絶滅リスクについて評価を行った。

 温暖化による海水温上昇に伴って、亜熱帯域において絶滅危機にさらされているサンゴが、日本の温帯域では逆に増加しているとの事実がある。このことから、日本の温帯域は亜熱帯域のサンゴにとって、種の絶滅を防ぐための避難場所として重要な役割を持つと指摘されている。しかしながら、温帯域のサンゴ集団が環境変化で絶滅しないような安定した集団であるかどうか、あるいは、亜熱帯域から温帯域へサンゴの幼生が海流によりどのように分散しているのかはこれまで不明であった。

 そこで、同グループは亜熱帯域から温帯域にかけて広域に生息する「クシハダミドリイシ」について集団遺伝子解析を行い、それぞれの集団の遺伝的多様性を調べた。その結果、昔からサンゴの生息が認められる和歌山以南の温帯域では遺伝的多様性が高いことが分かり、亜熱帯域に生息する準絶滅危惧種のサンゴの避難場所として機能する可能性が示された。

 さらに、海水流動モデルの結果として、亜熱帯域から温帯域へのサンゴ幼生の直接の分散が 1 世代で起きることは稀で、複数世代かかることも分かった。つまり、全てのサンゴ種が亜熱帯域から温帯域に移住できるわけではなく、亜熱帯域のサンゴの保全も依然として重要であるということである。

論文情報:【Scientific Reports】The potential role of temperate Japanese regions as refugia for the coral Acropora hyacinthus in the face of climate change

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